キャッシュ・フロー計算書間接法を本当に理解しているか
一般に教えられている、キャッシュ・フロー計算書の間接法の理解方法では、理論的に一貫した理解は困難である。このシリーズでは、差額貸借対照表から理論的に一貫した理解方法を提示する。
2012-02-16
このシリーズでは、キャッシュ・フロー計算書の作成方法について一通り学んだことのある実務家及び学習者に向けて、7回に渡って解説を行います。キャッシュ・フロー計算書について初めて学ぶ方がわかるようには書いておりませんので、この点ご了承ください。
ここで披露するキャッシュ・フロー計算書間接法の理解の仕方は一般書籍で説明されているものとはずいぶん異なっています。しかし、私がこれから説明するように理解する以外にキャッシュ・フロー計算書間接法に関して一貫した説明をするのは難しいと考えられますので、私自身はむしろより普遍的な説明であると考えています。
キャッシュ・フロー計算書の「営業活動によるキャッシュ・フロー」の表示方法については、ご存知のように直接法と間接法とがあるとされています。直接法については直感的に理解できる方法ですので説明することは特にありません。
一方で、間接法についてはいろいろ勉強してみてもなんとなくしか分からない、あるいは分かったような、分からないようなモヤモヤとしたものを抱えたままの方が多いのではないでしょうか。なぜ間接法の表示でよいのか、飲み込めないものがあるのではないでしょうか。私は受験時代、ずっと悩んでいました。
納得がいく説明が得られるまで考え続け、ようやく分かったと思ったとき、一般的な書籍の説明とはずいぶん違う説明を思いつきました。その結論からすると、一般的な書籍の説明で間接法を完全に理解することは不可能であるとしか考えられません。
私が思うに、以下のように考え方を変更しない限り、間接法を完全に理解することはできないはずです。
- 間接法は、表示方法だけではなく作成方法そのものを指している。差額貸借対照表からキャッシュ・フロー計算書全体を作成する方法である。
- 間接法でキャッシュ・フロー計算書を作るためには、特定の勘定科目の増減はキャッシュと直接取引が行われたとの仮定が必要である。
- キャッシュ・フローと勘定科目の増減(差額)の関係は、損益計算を通して理解してはいけない。
- 勘定科目の増減(差額)は原因別の要素に分解されて、区分ごとに表示される。「営業活動によるキャッシュ・フロー」の表示は投資活動及び財務活動、為替換算差額から決定される。
- 「非資金損益項目」という概念は混乱を招くので不要である。なぜなら、例えば減価償却費などは「非資金損益項目」という理由で「営業活動によるキャッシュ・フロー」に表示されているわけではないからである。
- 実際にはキャッシュ・フローを伴わない要素の増減(差額)で、反対要素の増減と相殺できるものは相殺する。
いかがでしょうか。ずいぶん非常識な理解方法であるように思われるかもしれません。特に「非資金損益項目」に関しては会計基準や実務指針にも載っているのでそれを不要というのはあまりにも過激だと思われるかもしれません。しかし、このように理解することによって例えば以下のような問題も明解に説明することができます。
- 税金等調整前当期純利益に減価償却費を加算するが、製造業の場合この減価償却費は販売費及び一般管理費に計上されている金額であるべきか、それとも減価償却費の総額であるべきか。その理由は何か。
- 退職給付引当金、貸倒引当金は、営業活動によるCFに増減額として表示するべきか、それとも退職給付費用、貸倒引当金繰入額として表示するべきか。
- ストック・オプション発行に伴い発生した、新株予約権の増減額は表示されるべきか。 その根拠は何か。
- 営業活動によるCFの為替差損益に、営業債権債務に係わるものを除いて表示する理由は何か。また、貸付金や借入金が外貨建てであった場合、為替差損益による残高の増減を営業活動によるCFに表示される為替差損益に含めるべきか。
- 営業活動によるCFに以前表示されていた役員賞与の支払額が削除されたが、その理由は何か。なお、役員賞与が利益処分で処理できなくなったから、では十分な説明になっていないことに留意する。





